この度、原作『勁草』の著者・黒川博行さんが出演するメイキング写真が2点解禁となった。自身の作品が映像化される際には、カメオ出演をすることが定番となっている黒川さんが、本作でもとあるシーンに登場。薄暗い部屋の中、卓を囲って賭博をする一同の中に、黒川さんの姿が。胡坐を組んで、真剣な表情で手元を見つめるその姿は、緊張感のあるシーンに見事に溶け込んでいる。「(原田監督が)どんな風に映像化してくれるのか、楽しみでしかたなかった」と語っていた黒川さん、原田監督が描きたかった世界観を、自身の手でも形にした。
はじまりは、『勁草』が刊行された2015年だった。直木賞作家が、驚愕の犯罪手口と悪辣な実態を描くクライムサスペンス問題作として話題となり、単行本・文庫本・電子書籍を合わせた現在までの総販売部数は、8万部を突破している。発売直後、特殊詐欺グループの内実がリアルに描かれた世界観に惹き込まれた原田監督が、映画『金融腐蝕列島 呪縛』(99)『RETURN』(13)などで当時タッグを組んでいた鍋島壽夫プロデューサーに、映画化の話を持ち掛けた。犯罪は社会を映す鏡。なのに、なぜ日本ではこんなにも特殊詐欺の被害が横行しているのか、フィルム・ノワール* 的な要素も含めて、作品に興味を抱いたのだという。しかし、原田の想いに反して、すぐに実現に至ることはなかった。(* 1940年代から1950年代後半にハリウッドでさかんに作られた犯罪映画のジャンル)
それから数年間、『勁草』実写化の構想を練りながら、原田監督は、映画『関ケ原』(17)『検察側の罪人』(18)『燃えよ剣』(21)など数多くの作品を世に送り出し続けた。そして、2021年、『ヘルドッグス』(22)製作チームの手助けもあって、遂に自身の手で映画化できる運びとなった。「辛抱強く6年待った」と語る原田監督に対し、黒川さんは「監督の名前を聞いて、一も二もなく映画化に同意した」と、後に相思相愛だったことも判明。本作は、黒川さんにとっても待望の初タッグ作品となった。
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